このLovehearts Storyは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。
2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。
東京のベッドタウン・浦和市という大きな街で中学時代を過ごし、
越境入学してくる他県の生徒との親交をあたためるなかで、
池田の心のなかに少しずつわだかまりが生じていったようだ。
それでも中学校の3年間はなにごともなく過ぎ去り、
彼女は祖母と母親も通った浦和市内の名門・浦和第一女子高等学校に進学する。
埼玉県は"公立王国"といわれ、難関の医学部進学を目指す生徒が公立校に進学するケースは少なくない。
その証拠に入学後も医学部進学のため、相変わらず学習塾の講習会には通い続けたし、
学内定期試験の順位も1ケタをキープし続けた。同級生の信頼も厚く、クラス委員に選ばれた。
公立校進学は、医学部合格に向けて、まさに予定通りのコースだったのだ。
また、浦和一女に入学した年、3歳から続けてきた努力が報われ、日本舞踊若柳流の師範名取を許されている。
なにもかもが予定通りだった......はずだった。
古河の神童がレールを踏み外す日は突然やってきた。
高校2年に進級する前の春休み、
池田は親の勧めで受講した医学部進学特訓教室主催の「春季合宿講習会」に参加した。
東京都・大田区にある同塾の学生寮に10日間宿泊しつつ1日10時間以上も講義を受けるという、
高校生にとっては少々厳しいものだった。
学生寮ではほぼ男女共同生活。
部屋こそ一緒ではないものの、通路をはさんですぐ向かいには男子生徒の宿泊する部屋があるため、
おのずと仲良しになる。
池田の向かいの部屋に入っていたのは24歳の浪人生だった。
あろうことに、経験が浅くオクテだった当時の池田嬢は、この8歳年上の男性にナンパされてしまうのだ。
「チャラチャラした奴でした(笑)。
20代のくせに、赤坂で遊んでるような金持ちのボンボン。
中国人とアメリカ人の血が入ってるらしく、さすがにルックスは抜群だったんですけどね。
悪い男にひっかかっているという実感はあったんですが、なにせわたしもそのころは世間知らずだったので、
彼の言うがままに振りまわされてました」
彼とつき合うようになってから、彼女の生活は目に見えてすさんでいった。
もともと苦手だった現代文や古文の時間がくると、保健室に行くという名目で授業をサボるようになった。
ご存知のように、ズル休みは1度サボると止まらなくなる。
ボーイフレンドが遊び仲間を連れだって校門の前まで迎えにくるようになるまで、さほど時間はかからなかった。
8歳年上の彼はいろんな遊びを知っていた。当時流行っていたビリヤードにハマった。
吉祥寺のライブハウスにも行った。若者のメッカだった原宿・竹下通りに車で乗りつけた。
ときには那須高原までドライブもした。
今ではごく普通の高校生だってやっていることかもしれない。
しかし彼女は開業医の娘として生まれ、幼いころからエリート教育を受け、
現に県内屈指の進学校に通いトップに近いところを走りつづけている女子高生なのだ。
その豹変ぶりに驚かないわけにはいかない。
〒150-0041 東京都渋谷区神南1-11-1市野ビル8F
TEL:03-5428-3905 FAX:03-5428-3902