このLOVEHEARTS STORYは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。 2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。

父の死

「死の恐怖がセント・ジョンの臨終を暗くすることはありえず、彼の精神は一点の曇りもなく、彼の胸は恐れを知らず、彼の希望はゆるぐことなく、彼の信仰は堅固であろう」
(C・プロンテ「ジェイン・エア」中央公論社)

「昨年、父が世を去りました。わたしは幼いころから父の生き方を間近で見てきました。
医師になろうと思ったのも、医師にはなりたくないと思ったのも、父の姿を見てきたからこそでした。
昼も夜もなく働き、わずかの合間を縫ってわたしを外界に連れ出してくれた、精力的な父を心から尊敬していました。
父のような医師が身近にいなかったなら、医師の道を歩むことも思いつかなかったと思います そのいっぽうで、気の休まる暇がない父の生活を見て、『わたしにはぜったい真似できない』と思っていたことも事実ですが、すでにお話ししたように、最終的に医師の道を選ぶことを決めたのも、やはり父の言葉がきっかけでした。
苦しいときも『父ほど責任感の強い医師が、わたしに医学の道を歩めと言うのだから、わたしには他人の人生を背負うだけの素質があるはず』と自分に言い聞かせて勉強に励みました。
尊敬する人は誰か? と聞かれたら、わたしは迷わず、両親だと答えます。
父はわたしの心の支えであり、人間としての理想像でした。
父が亡くなってから、しばらくなにもやる気が起こりませんでした。
仕事から帰ってきて、ボーっとしながらテレビ画面を眺めていると、『情熱』という曲が流れてきました。
愛する人への情熱を感じたらもうとどまることはできない、そんな内容の歌詞だったと思います。
少しだけ、やる気が出ました。
果菜子を連れて前夫のもとを飛び出し、医師の道を選んだときから、わたしの運命は動き出したんです。
もうわたしだけの人生ではない、弱気になってとどまることは許されない......」