このLOVEHEARTS STORYは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。 2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。

過酷な臨床研修

医師の道を志してからというもの、一心不乱に医学を学んできた池田。
いまだ研修医ではあるが、念願かなって、ついに医師として形成外科医局に入局した。
新米医師には2年間の臨床研修が課されている。
形成外科医は形成外科だけ研修を受けるというわけではなく、通常2ヵ月ごとにさまざまの医局をローテーションする。
当然、研修期間中は急患への対応にも駆り出される。
「研修中は何度も逃げ出したくなりました。勤務時間はだいたい午前7時から午後10時まで。
とはいえ、1ヵ月に当直が7回ほどあり、
そのほかに大学外の病院でも月に4、5回当直をせねばならないので1ヵ月の半分くらいは病院に泊まるわけです。
ローテーションのなかでも、麻酔科勤務は特に大変。
麻酔をかけたあとはほとんど徹夜で機器を監視し続けるので、朝はフラフラ。
1時間ほど仮眠をとることができるのですが、起きるとすぐに研修が始まる。
しかも、徹夜明けにもかかわらず研修は深夜まで続く。
あまりの疲労から立っていられなくなった同期生が「オペ台で寝てろ」と言われたりしてました(笑)。
娘には申し訳ないのですが、心配してあげる余裕すらなかったというのが事実です。
身も心もズタズタになりました。心臓外科を選んでいたら毎日こんな生活が続くわけです。
正直言って、自分が心臓外科に行こうとしていた時期があったなんて、いまでは信じられません」
じっさい過労死する医師も絶えないのだという。
聞いたところによると、池田の同期生だけですでに3人も亡くなっている。
プライバシーがあるので概要を述べるにとどめておくが、1人目は病気になって約3ヵ月入院したあと、まだ24歳という若さで亡くなった。
2人目は卒業して2年で自殺。
3人目は2連続で当直をこなしたのち、突如亡くなったという(あとで過労死であることが判明)。
「わたしも常々いつ死んでもおかしくないと思っていました。
当直をしているあいだは仮眠をとれるのですが、神経が高ぶり、動悸が激しくなり、とても眠れるような状態ではありません。
慢性的な睡眠不足と、生死の現場に立ち会うことからくる精神的なプレッシャーで気が変になりそうでした」
信じられないような話だが、これだけ徹底した研修があってこそ、医療の安全は保たれるのかもしれない。