このLOVEHEARTS STORYは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。 2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。

2度目の大学受験

1日5時間の受験勉強で間に合ったのかと池田に聞いたが、実際のところ「ぜんぜん間に合わなかった」という。
「わたしの父、兄ともに東京医科大学(東京都・新宿区)を卒業していましたので、わたしも同じ大学を受験しようと思っていました。
ところが直前になって東京医大の過去問題にチャレンジしてみると、難しすぎてぜんぜん歯が立たない。
特に数学は自分の力ではいかんともしがたいレベルの差がありました。
学校のレベルなどほとんど考えていなかったので、本当に直前になって、どこを受験するべきか、大急ぎで検討せねばならない羽目になりました。
とりあえず、
偏差値上は東京医大よりちょっと下といわれる杏林大学医学部(東京都・三鷹市)の過去問題をやってみると、数学と物理は満点!今までやってきた勉強は無駄じゃなかったということに少し安心するとともに、1年間の勉強で合格する可能性が見えたことで気が高ぶりました。
『もう少しで白衣を着られる日がくるかもしれない』
本番は落ち着いていました。2度目の大学受験でしたから。
10代のコたちと同じように緊張するわけにはいかないでしょう。オトナとして。
過去問題同様、数学と物理は満点近く取れたと思います。
全試験が終了した時点で、合格点は取ったという実感がありましたね。

試験会場からの帰り道、果菜子の顔を思い浮かべました。
わたしの生きていく力の源であり、わたしの生きていく目的でもある娘。
今日も保育園で楽しく過ごせただろうか。
お母さんはこれから帰ります。
父と母が喜ぶ顔も思い浮かべました。
わたしの自分勝手な行動を常に戒め、許し、支えてきてくれた愛する両親。
受験、終わりました。
ようやく他人のために生きていくための1歩を踏み出せそうです。
今までありがとう、これからもよろしく。

この1年間だけでなく、わたしの生きてきた30年間を支えてくれたすべての人たちのおかげで、わたしは今こんなに満たされている......
結果はまだ出ていなかったけれど、すべてを出し切ったという満足感に浸りながら、果菜子を迎えに行きました」
受験から2週間ほどたった日の午後。まだ肌寒い音羽の杜に、少しだけ早い春がやって来た。
サクラサク─。