このLOVEHEARTS STORYは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。 2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。

果菜子ちゃん誕生

大きな波風は立たなかったが、心のモヤモヤは晴れぬまま1年が過ぎた。
そして明くる年の3月、池田は待ち望んでいた子供を無事出産する。
この子が現在女子高に通っている、娘の果菜子ちゃんである。
「わたしは生まれたときも泣かない子供だったと母から聞いていましたが、
果菜子も同じで、ぜんぜん泣かない子でした。
"珠のような子供"とはまさにこんな子のことをいうのだろうと思いましたね。
真っ黒で深い瞳、やわらかい髪の毛、プックリした頬。
この子がいれば、どんな辛いことでも乗り越えていける、そう思いました。
果菜子を見つめる夫の顔も無邪気に笑う子供のよう。
子供の存在が人の心をこれほど和やかにするものだとは思ってもいませんでした。
今度こそ平和な夫婦生活が訪れるにちがいない......祈るように自分に言い聞かせました」
行き場を失った池田の瞳に、果菜子ちゃんは救世主のように映ったにちがいない。
しかし、ワラをもつかむ思いで産んだ果菜子ちゃんの存在さえも、2人の夫婦関係を改善することはなかった。
「結局、問題だったのは"夫婦関係"そのものではなく、
キラー通りのあのビルに住んでしまったことだったと思うんです。
義父は老舗企業の社長、叔母は旧財閥に連なる名家の嫁、義母は原宿一帯を所有していた大地主の直系。
家のしきたりや慣習など、排他的なものが色濃く残っていました。
そういう"束縛"こそがわたしを苦しめていたのだと思います。
2人きりの新婚生活を送っていたならば、もう少し話し合う余地があったのかもしれません。
わたしの母がかつてそうしたように、あのビルを飛び出すこともできたのでしょうが、
夫が親元を離れて追ってきてくれる可能性はほとんどありませんでした」
果菜子ちゃんが生まれてちょうど1年目、とうとう"お姫様物語"は破綻の日を迎える。