このLOVEHEARTS STORYは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。 2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。

結婚していいのかな

プロポーズから半年後の結婚まで、2人は週1回ずつデートを重ねた。
「今だから言えるのですが、プロポーズを受けてから、彼の印象は少しずつ変わっていきました。
半年間は、彼の仕事がお休みの日曜日だけ会っていたんです。
2人で過ごす日曜日の昼下がりは幸せそのものでした。
これから先に待ち受けている結婚式のこと、結婚生活のこと、生まれてくるであろう子供のこと......
デートしている間にも夢が膨らんでいくのです。
ところが何回かデートを重ねるうちに、日が暮れると彼がソワソワするのが目に付くようになってきました。
どうやら翌日の仕事のことが気になって仕方がないようなんです。
はじめはさほど気にならなかったのですが、慣れてくると夜はむげもなく帰ってしまうようになりました。
週に1回しか会えないのに、結婚する前から仕事のことが気になって仕方がないというのでは、
先が思いやられる気がしましたね。
そういう日曜日が続くようになると、わたしのほうにも少しずつストレスがたまっていったのです。
お互いをほとんど知らないのだから、
お互いの気持ちに齟齬があるのは仕方のないことだと自分に言い聞かせて過ごしました。
結婚して毎日顔を突き合せるようになれば、仕事と結婚生活のバランスもとれるようになるだろうと。
ようやくめぐり合えた結婚相手だったこともあり、将来に対する過度の期待で不満はかき消されていたと思うんです。
彼が帰ってしまった直後は、将来に対する一抹の不安を感じたりもしましたが、
会えない6日間はむしろ幸せなことばかりを想像して過ごしてましたから。
結局、大きなケンカもなく結婚式まで辿り着くことができました」
男女を問わず、仕事と家庭生活の両立は困難な問題だ。家事・炊事を二等分して分担し、
2人がそれぞれの仕事で最大限に能力を発揮し、努力して2人の時間を持ち続けるのがもちろん理想型。
しかし、たいていの場合どこかで完全な幸福をあきらめねばならない。
「時間があるときはおカネがない、おカネがあるときは時間がない」というのが現実の姿。
結婚する前はそういう現実が見えないものだ。
池田の場合は夫に資産もある、定期的に会える時間もあったのだから幸せなほうといえるのではないか。
「その通りかもしれません。確かに、当時は誰もがうらやむ幸せな結婚でした。
今でも母はそういいます。
結婚披露宴は、虎ノ門のホテルオークラで250人ほどを招いて開きました。
父と母は終始嬉しそうな顔をしていました。2人の笑顔を見ていると、結婚して本当によかったと思いましたね。
当時はまだOL生活を送っていたペコ(家田荘子)も来てくれて、得意のエレクトーンを聴かせてくれました。
曲はわたしが学生時代にハマっていたアース・ウインド&ファイアの名曲『宇宙のファンタジー』。
2次会は日大芸術学部の友人がセッティングしてくれて、午前2時くらいまで騒ぎました」
だが、話はそれだけでは終わらないのだ。
「その日の夜はホテルオークラのインペリアルスイートルームを予約してありました。
1泊50万円という貴賓室です。
おフロがいくつもついていて、夜を楽しみにしていたのですが、
部屋につくやいなや義姉夫妻が部屋に遊びにきたんです。
新婚夫婦の寝室に入ってくるなんてひどいと思いませんか?
とはいえ、夫の姉をむげに追い出すわけにもいきません。
わたしたちの結婚を祝福してくれるからこそだと自分に言い聞かせてお酒につき合いましたが、
結局外が明るくなるまで飲んでたんです。せっかくのインペリアルスイートもこれじゃ単なる宴会場じゃないですか」
確かに。しかし考えようによっては、1泊50万の部屋を酒を飲むためだけに使うのも一種のぜいたくではないか。
「それはそうなんですけど。まだ話には続きがあるんです。
姉夫妻が出て行ったあと仮眠をとり、結局は部屋に3つもついているインペリアルスイート自慢のお風呂も使わないままチェックアウトしようとしたそのとき、義母から電話が入り、
『親族がみんなで集まってるから、『八竹(神宮前の老舗鮨屋)』で寿司を買って来てちょうだい』と。
さすがにうんざりしました。
母も昔、加須市の義母と反りが合わずに家を飛び出していきましたが、
わたしもそうなるんじゃないかという不安が芽生えてきたのはこの出来事があってからでした」
結婚早々先が思いやられる出来事の連続。ダメなものにはダメと言う性格の池田が、
自分を曲げて我慢したというだけで驚きだ。
しかし、そこまでしても守りたい、「誰もがうらやむ」お姫様生活とはどんなものだったのか。