このLOVEHEARTS STORYは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。 2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。

"バランス"こそが美の基本

では、池田の施す美容整形は他の医師とどこがちがうというのか。
整形はきっかけに過ぎないというのならば、目は大きなほうがいいだろうし、
鼻はしなやかに伸びる鼻筋のほうがいいと考えるのは、わたしが素人だからだろうか。
「そうですね、ズバリ素人の考えかたです(笑)。整形で大切なことはバランスをとることに尽きますね。
しかもそれは、個性を大切にすることにもつながってくるんです。

二重にすればキレイになれる、頬の肉が落ちれば美しくなる等々、あまりに楽観的です。
二重も小顔も全体と調和してこそ美しくなるのであって、絶対的に二重が美しいわけではないし、
痩せ顔が必ずしも魅力的だとは限りません。しつこく繰り返すようですが、
『嫌な部分を取り替える』という発想では絶対美しくはなれません。

はじめに言いましたが、最近の日本女性の造作は、西洋的な要素と東洋的な要素がうまく混じり合って、
今までとは異なる日本人ならではの美しさを醸し出しています。
まるごとすげ替えるなんて逆効果。むしろ環境や習慣のせいでゆがんでしまった、
身体がもつ本来のバランスを保てるよう微妙に修正してあげるだけで十分なのです」

 その"バランス"とは具体的にどんなものなのか。
「それはわたしのセンスです。といっても、常識からかけ離れた突拍子もないものではありませんからご安心ください(笑)。
もちろん、わたしの考える美だけが絶対的な美だと主張するつもりはありません。
感覚を他人に伝えることはとても難しいことですが、なかでも美にかんする感覚はわかりづらい。
強制的に押しつけようとしても、伝わるものではありませんから。
 わたしの考え方と美的センスに賭けてくれる人、わたしを信頼して相談にくる人には、
分かっていただけるまでお話ししてきたつもりです。
美容外科というのはいわば職人芸。機械的に説明できるものではありません。
語弊はありますが、やはりわたしの『センス』というほかありませんね(笑)」

 しかし、そう聞いてもやはりピンとこない。具体例がないと"バランス"のようなあいまいな言葉は理解できない。
そこでわたしは男性として常日ごろ気になっている、ある現象について質問してみた。
「近ごろデビューするタレントは、確かにみな昔よりスタイルがよくなっているし、顔立ちも整った人が多いように思う。
それなのに、デビューして1年もすると痛々しいくらい頬がこけ、ギスギスに痩せてしまう人が多い。
しかも、10代の子たちは(なぜか)そういうタレントたちを見て、自分もやせなきゃと思っているフシがあるような気がする。
ああいう痩せかたを先生は美しいと思う?『ダイエットは女にとって人生の課題』なんて言う人もいるが、
先生の"バランス論"の立場からはダイエットをどう見る?」

 池田は我が意を得たりとばかりにこう言った。
「痩せることが悪いとは思いません。でも、顔だけギスギスにやせてもダメ。
そもそも身体のどの部分であろうが、"ギスギス"なんて表現が似合ってしまうほど痩せることじたい、絶対ダメです。
実はわたしのところには、高校生から大学生くらいの若い子たちもけっこう相談にくるんです。で、ほとんどはこういう問答になります。

『今日はどうして私のところに来たのかな?』
『実は顔にムダ肉がついてしょうがないんです』
『えー、そうは見えないけどなぁ』
『頬がパンパンに張ってるのがいやなんです』
『あたしも昔そうだったわよ。気にしなくて大丈夫』
『自分の顔が嫌いになりそう』
『......』

繰り返すようですが、痩せることじたいは悪くないと思います。医学的には、太りすぎ(皮下脂肪が過剰な状態)は成人病のもとです。
実際の生活でも、痩せているほうが着られる服が多いことは確かですから、痩せたいという気持ちが起きるのは当然のことかもしれません。わたし自身、子供を産んだあと20キロも太り、本当にやせたいと思ったことがありました。
しかし、問題なのは"痩せる=キレイになる"という幻想にとりつかれてしまう人が多いことです。
いまやそこそこのお金さえ出せば、エステティシャンの指導を受けたりするのはさほど難しくない世の中。
器具や薬を利用してやせることに違和感を感じる人は少なくなってきています。
だからといって責任ある医者が、時流に乗って若い子たちの要望になんでもかんでも応じていいということにはなりません。
中~大学生くらいの年齢は、もともと水分が皮膚に行き渡る時期なんです。

よく"みずみずしい肌"なんて言いますよね、肌に水分が蓄積される=保湿されている状態はむしろ好ましいのです。
20代も後半に入れば、自然と肌の水分の量は減ってきますし、脂肪も徐々に落ちていくものです。
ところが最近の若い女性たちは10代のうちから顔の脂肪吸引をしてしまうものだから、
20代後半になって肌が衰えてきたときには、必要以上に皮下脂肪が減っているということになる。
そして結局はもう1度脂肪を注入するために、美容外科にやってくるというわけです。とっても馬鹿げたことでしょう?
さらに言えば、そういう患者の無知につけこんで、患者の人生について考えることもなしに、
お金のためならなんでもかんでも整形してしまう無節操な医師がいることも問題なんですけどね。
ともかく、世間で流行している"小顔化"だけを考えていては、とうていバランスの美学には辿り着けないということです」