このLOVEHEARTS STORYは、院長池田優子が、その生い立ちから医師としての道を歩むまでの紆余曲折の半生を、ノンフィクションライターが綴ったものです。 2002年に発刊された本ですが、多くの女性に勇気を差し上げることができればと思い、ここに掲載させていただきます。

突然のキャンセル

年明け、久しぶりに雨が降り、肌寒い東京・渋谷。いまや渋谷のシンボルになった『セルリアンタワー東急ホテル』の一階ロビーで、わたしはいまだ顔を見たこともない「美人女医」を緊張しながら待っていた。すでに約束の時間を十五分は過ぎているのに、まだ来ない。何度か携帯電話を鳴らしてみたが、電話にも出ない。おいおい、遅れるなら電話ぐらいくれよな、なんてイラついてみてもはじまらない。美女を待つ男というものは、いつの世も寛容である。
 遅れること三十分、彼女からの電話が鳴る。
「もしもし、はじめまして。わたくし池田と申します。約束していたのに遅れてごめんなさい」
 そう、彼女の名前は"池田優子"。美容外科医。それが友人の女性誌編集者から聞いている情報のすべてだ。
「予約をいただいていた患者さんの相談を受けていたらこんな時間になってしまって、申し訳ないんですけど、今日はお会いできそうにないんです」
「ええッ、なんでですか?」
「女性は一日でも早くキレイになりたいと思ってるんです。彼女は勇気の要る決断をしてわたしを選んで訪ねてきたんですから、わたしの都合のために追い返すわけにはいかないんです。また時間を調整しますから、本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
ブチッ。
 あと五分か十分お待ちいただけますか、とでも言うのかと思いきや、今日は会えませんとは‥‥‥そんなのアリだろうか。美容外科に急患なんてあるのだろうか。そもそも整形をするのは芸能人くらいだと信じていたわたしは、納得いかない気持ちのまま、雨に打たれながら玉川通りを渋谷駅のほうに下っていった。
 改札口を見やると、いつもは見過ごしていた美容整形の広告がいくつも目に飛びこんできた。外見の悩みを抱えている女性って多いんだな‥‥‥。
 歩きながら池田先生の言葉を思い出した。
『女性は一日でも早くキレイになりたいと思ってる』
池田という人に会って、きちんと話を聞いてみたいと思った。